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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和59年(少)2754号 決定

少年 Z・I(昭四三・四・八生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

1  非行事実

少年は、昭和五九年三月一九日に毒物及び劇物取締法違反、窃盗、同未遂で当裁判所において福岡保護観察所の保護観察に付されたが、同年八月ころから前件当時の不良仲間らと交友するようになり、その仲間とともに夜間徘徊して遊興にふけり、同月三〇日から同年一〇月八日ころまでの間にバイク盗、自動販売機荒、事務所荒など八件の窃盗を行い、その間及びその後も、保護司や両親の指導を受け入れず、定職にも就こうとせず、昼間家で寝て夜間外で遊び回る生活を繰り返すなど、保護者の正当な監督に服しない性癖を有し、正当な理由がなく家庭に寄り附かず、犯罪性のある人と交際しているもので、このまま放置すればその性格環境に照し将来窃盗等の罪を犯すおそれがある。

2  法令の適用

ぐ犯の事実につき、少年法三条一項三号イ、ロ、ハ。

3  保護処分に付する理由

本件調査審判の結果明らかになつた少年の生い立ち、性格、環境、本件非行の動機、態様、保護者の保護能力その他諸般の事情を総合して考えると、少年を中等少年院に送致するを相当と認め、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用し、主文のとおり決定する。

なお、本件は、昭和五九年一一月一三日に福岡県○○警察署司法警察員から昭和五九年少第二七一〇号ぐ犯保護事件として送致され、更に昭和五九年一一月一五日に福岡保護観察所長から少年にぐ犯性があるとして犯罪者予防更生法第四二条一項による通告があり、当裁判所はこれを同少第二七五四号ぐ犯保護事件として受理した。

当裁判所は、先に受理した○○警察署司法警察員からの送致事実に基づいて上記の非行事実(ぐ犯)を認定したのであるが、後に受理した福岡保護観察所長の通告の内容は上記認定のぐ犯と同一であるから、上記認定のぐ犯について処分すれば足りるので通告のぐ犯については少年に対し処分しない。

(裁判官 増田耕兒)

〔参考〕福岡保護観察所長からの犯予法四二条一項に基づく通告書記載の通告の理由

本人は、

1 保護観察開始以後現在まで定職に就かず、両親の忠告や担当保護司及び主任官の指導に服さず無為徒遊の生活を続け(少年法第三条第一項第三号(イ)に該当)

2 昭和五九年七月末頃から同年八月二〇日頃までの間、家出中のA子、B等不良友人男女一〇名前後と、○○区○○に居住するC(二三歳)方を溜り場として夜遊び、シンナー吸引不純交遊を続け(少年法第三条第一項第三号(ハ)に該当)

3 昭和五九年八月二三日頃から不良友人Bらと夜間徘徊、家出をくり返しては車やバイクを盗んで乗り回して遊び、また家出中の遊興費として、店舗等の住居侵入盗、公衆電話機や自動販売機荒らしによる現金盗等五〇数件にわたる事件を惹起し(少年法第三条第一項第三号(ロ)、(ハ)に各該当)

たものであり、以上の行動はぐ犯行為に加うるに現に刑罰法令にふれる行為を繰り返してきたもので、その性格及び環境に照らして再び近い将来罪を犯し又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある。

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